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スワップ運用で収益をあげる
為替リスクを低減しつつリターンを得る
日本円以外の通貨と高金利通貨のペアで運用する
スワップ運用ではほとんどの場合、円を売り高金利通貨を買って運用することになると思いますが、円は安全通貨とされリスクオフの場面では買われる傾向があるので、逆に売られる傾向のある高金利通貨との組み合わせでは変動幅が大きくなることが多いようです。
したがって、為替リスクを抑制するには、クロス円に偏ったポジション構成を避けて、ユーロや米ドルなどの通貨との組み合わせも選択肢に入れるべきです。また、高金利通貨を発行する国が資源国の場合には、カナダドルなどの資源国通貨と相関性が比較的高いものもあり、為替リスクを軽減できるかも知れません。
【高金利通貨の値幅率】
期間 | 対円 | 対ユーロ | 対米ドル | 対豪ドル | 対加ドル | |
南アランド | 年初来 | 20.27% | 15.66% | 17.85% | 17.94% | 12.56% |
3年 | 42.78% | 32.30% | 37.26% | 30.04% | 32.25% | |
メキシコペソ | 年初来 | 12.57% | 9.30% | 10.24% | 14.34% | 10.44% |
3年 | 38.77% | 33.19% | 31.57% | 31.67% | 27.27% | |
ロシアルーブル | 年初来 | 19.70% | 13.82% | 11.91% | 13.93% | 9.78% |
3年 | 43.37% | 34.57% | 31.56% | 38.03% | 30.57% |
上の表は2021年の年初からと直近3年の高値と安値の幅を率で表したもので、それぞれ対円・ユーロ・米ドル・豪ドル・カナダドルでの変動の大きさを示しています。これを見ると対円で高金利通貨を保有した場合の変動がどちらの期間でも最も大きく、為替の影響を最も受けることがわかります。つまり、円売り高金利通貨買いのスワップ運用の為替変動リスクが最も高いということです。
スワップがそれ相応に低くなってしまうことがほとんどなので、スワップの額がいくらかによりますが、円以外の通貨とのペアで保有する方が、いくらか為替リスクを抑えられると思います。
残念ながら上記のどの組み合わせの通貨ペアでも取引できるというわけではありませんが、SAXOBANKならオーストラリアドル/南アフリカランドやカナダドル/メキシコペソあたりを扱っています。外資系だとマイナー通貨ペアの選択肢が多いので、IG証券やOANDAも要チェックです。
また、知る限りでは2021年を通してルーブル/円のスワップよりユーロ/ルーブルのスワップの方が高くなっていました。そのうえ変動もユーロ/ルーブルの方が小さくなるなら、対円より対ユーロで運用した方がかなり有利になるはずです。わずかであってもリスクを減らしたいと考えるなら、少なくとも対ユーロや対ドルの通貨ペアの動きやスワップ額を確認しておくべきでしょう。
逆相関となっている通貨ペアを組み合わせる
先に見たように、メキシコペソ/円と南アフリカランド/円の両通貨ペアを保有していても、似たような動きをするので、あまりリスク分散とはなりません。もし、通貨ペアAが上昇するときに下落する通貨ペアBがあれば、一方がプラスとなったときにもう一方はマイナスとなり相殺されるので、両方を保有しておけば為替の変動の影響を減らすことができるはずです。
上のチャートはコロナショック後のユーロ/ポーランドズロチとユーロ/インドルピーの動きを示したものです。なぜかはわかりませんが、なかなかきれいに逆相関となっているようで、ルピーが上昇するとズロチが下がり、ズロチが上がるとルピーが下がる場面が多く見られます。(恐らくはルピーがドルに近づくよう為替が管理されているからかと思われます)
長く続く保証はありませんが、このような通貨ペアを組み合わせて保有すれば、短期の為替の上下動の影響を抑えつつスワップポイントを稼げるはずです。レバレッジをかけて高収益を狙う場合には、特に有効かと思います。
ただ、期間を通してほぼユーロ高傾向で推移しているので、少しずつ評価損が増えていくことになるかもしれません。しかし、2021年末あたりの金融政策を考慮すると、ポーランドは10月に利上げを開始したところで、インドはまだ引き締めに入っていません。ここから利上げが進み、2022年にいくらかユーロ安ズロチ高とユーロ安ルピー高になれば、両通貨を同一口座で保有することで、うまくスワップを得られる組み合わせになるかもしれません。
また、コロナショックのようなときには両通貨とも下げるので、完全にリスクを回避することはできませんが、平常時に為替の影響を抑えるのにはそれなりに有効と思います。それでも、コロナショック直後の動きを下の2020年の年初からのチャートで見ると、メキシコペソ/円(緑)や南アランド/円(青)と比較して遥かに小さな下落しかしていないことがわかります。(ユーロ/ズロチとユーロ/ルピーは上下逆にしています)
ズロチとルピーは両通貨とも下落を続けて、その後も下値を切り下げるのですが、比較的狭い変動幅(桃色)でかなりマイルドな動きになっています。(その間ズロチはマイナススワップの期間あり)
ほぼ同じですが、上のチャートのズロチとルピーの合成したものが下の桃色のラインで、多少わかりやすいかと思います。さすがに為替がコロナ前から-7.5%だとスワポと差し引きして利益を出せませんが、ここから先も真横に行ってくれるなら保有の価値はあると思います。
変動の大きいペソ/円やランド/円のみでレバレッジをかけて運用すると、どうしてもドカンとやられてロスカットになりがちです。さらに同じタイミングで下落する通貨ばかり保有していると、リスクオフのときにポジション維持のための資金が足りなくなることもあるかもしれません。
多少スワップの額が少なくても、為替差益を狙わず落ち着いて長期運用する場合には、こういった通貨も加えその比率を高めにするのもリスク低減に効果があると思います。
このように、クロス円以外の通貨ペアを含めて、高めのスワップポイントを得られて、変動の小さい通貨に分散投資すると同時に、相関性の低い通貨ペアや逆相関の通貨ペアを組み合わせていくことで、より安定した運用ができるはずです。